504, 505 adidas GERD MÜLLER HAT-TRICK

504 GERD MÜLLER HAT-TRICK
Made in West Germany

505 GERD MÜLLER HAT-TRICK

Made in West Germany

ゲルト・ミュラー選手の追悼コラムの後ですので、偉大なストライカーのシグネチャーモデル、ゲルトミュラー・ハットトリック(以下GM-H)のご紹介になります。

最近のスパイク紹介はカーフ革モデルの投稿が続いておりますが、実際は本当にカーフ(特にボックスカーフ)だったのか?
という疑問探究の内容になってしまっています。

今回のモデルも、アディダスでは珍しいボックスカーフ製と記してある広告について以前、こちらの投稿に載せたことがあります。

アディダスは独自のadicalfという革名があり、同じカーフと名の付く革で、どう違うのか興味がありました。

adicalfの名称が初めて使われたのはいつなのかは存じませんが、1970年ごろに登場したこちらのモデルのカタログ(広告)にはその革名が使われています。

adidas 2000

この当時すでに皇帝(ベッケンバウアー選手)のシグネチャーモデルが登場していますが、ミュラー選手は70年W杯で得点王になり、その後、アディダスの偉大な広告塔のお一人として様々なシグネチャーモデルが登場しました。
また、アディダスのスパイクではよく登場するオックスハイド(ズ)の名称も使われています。

こちらは海外の2000のカタログ画像で、

ドイツ語でも英語でもadicalfは共通です。

一方で、その下のクラスの皮革について、
adidasは70年代前半ですでに、ドイツ語のrindboxlederは英語でoxhide(雄牛革)と記しています。
(このころからEUROPA CUPというモデルがあったんですね)

ちなみに前回、プーマはrindboxlederをcowhide(雌牛革)としていたことを紹介しました。
ドイツでは革種で雌雄差はないみたいですが、やはりアディダスと同じ英訳はしたくなかったんですかね?

GM-Hは(たぶん)一番古いミュラー選手のシグネチャーモデルで、登場時(72年ごろ)の広告の一つには、
 
ドイツ語の説明(上段)ではmastboxlederですが、
英語ではboxcalfとなっています。

このパターンは前回のmenottiシリーズと同じだな…。
本当にボックスカーフとしていいのだろうか?

プーマもそうでしたが、アディダスも母国のドイツ語でboxcalfと書いていないと、英訳(他国語訳)された後の革種名は信憑性を疑ってしまいます

では、ドイツ語でboxcalfと表示されたアディダスのモデルはあったのでしょうか?

調べた限りでは、

こちらの紹介でも載せた70年代半ばの広告で、フランス製モデルのペニャロールは、

上段のドイツ語にboxcalfの表示があります。しかし、フランス語ではとてもしなやかな革みたいな抽象的な表現になっています。

adicalfはどちらの言語でも使われていますが、WORLD CUP 74はドイツ語はadicalfですが、フランス語はカンガルーになっています。
まあ、このモデルはどちらの革のタイプもありますけど…。

GM-Hも載っていますが、

やはりドイツ語はmastboxlederで、フランス語は具体的な革の名称がありません。

驚いたことに、

この4足はすべてrindboxleder(ドイツ語)ですが、1190だけフランス語訳がboxcalfになっています。
かなりいい加減な感じがします…。

さらにアディスーパーソールがデビューする直前の78年のドイツ語カタログでは、

アディニールソールのワールドチャンピョンはカンガルー革モデル。


このタイプのシュータンは珍しい(かもしれない)ワールドカップウィナーはadicalfと記されています。この側面の表示はオーストリア製かもしれないですが…。
こちらのカタログにはLEEDSやINTERなどのrindboxlederのモデルは載っていますが、mastboxlederのモデルはありませんでした。

しかし、

モデルチェンジしたPenarolと70年代の初代Zephyrはboxcalfとなっています。

もしかしたら、70年代のアディダスはカーフモデルの場合、西ドイツ製にはadicalf、フランス製にはboxcalfとして区別したかったのもしれません。

さらに80年代になると革種表示のあるフランス製モデルの広告はなかなか見つからないのですが、数少ない1つがこちらです。

こんなモデル名があったなんて知りませんでしたが、こちらは英語表記ですがFrench calfとなっています。このモデルの取替え式はこちらかもしれません。

ついでですが、ワールドカップウィナーやスーパーカップが廃版となり、その後あまり見たことがなかった西ドイツ製のadicalfのモデルですが、SWEEPERとともに載っていたこちらのモデル、

こんな皇帝モデルも見たことがありませんでしたが、こちらはadicalf製です。そういえば、こちらで紹介した親善試合で皇帝が使っていたモデルがこのスパイクだったかもしれません(シュータンは違いますが…)。
80年代の
Profiは色が青っぽいし、革種がナゾだったんですが、Adicalfだったんですかね?(nappa leatherという説もあるようです)
タンゴの特別版(?)も初めて見ました。

オーストリア製は80年代になってもカーフっぽい革のモデルはいくつかあったと思われますが、austrian calfだったのでしょうか?
ユーゴ製だとどうなのかな?

話を今回のモデルに戻します。

504タイプの初期型GM-Hですが、

日本の広告だと76年までだったようで、このころはソールのリベットはなくなっています。
そして、77年の広告では、

505タイプの新型にモデルチェンジしたようです。
このころまで、日本の兼松さんの広告ではカンガルーとアディカーフ以外のモデルは、特に革の種類の表示はなかったようですが、

78年になると、

革の種類の表示がありますが、新型GM-Hはボックスカーフではなく、

オックスハイド?
になっています。

新型になってからのドイツの広告は

一貫してmastboxlederです。

また不思議なことに、上のオックスハイドと記載された広告は78年2月号のサッカー雑誌のものですが、
78年の5月号のサッカー雑誌には

再び旧型の504タイプが掲載され、ボックスカーフと記されています。
他のモデルは、かかとにはトレフォイルマークとadidas文字の入ったタイプですが、GM-Hだけは、新型があるにもかかわらず、わざわざ1世代前のモデルになっていることに違和感を覚えます。

まあ、今更こんな古いモデルの皮革論議をしてもしょうがないのですが、新型GM-Hがオックスハイドで2万円近いと、カンガルーやアディカーフのモデルしか購買意欲が湧かなくなるのを避けるために、旧型に戻したのでしょうか?

プーマも70年代中頃のモデルで、
Mastboxlederがboxcalfになっているモデルもあります。

Mastboxlederの中で仔牛のものはboxcalfと説明されているWEBサイトもあるのですが、やはり明確に分けている方が主流のようなので、もう一度AIさんに聞いてみました。


1. 「Mastboxleder」 という名前が使われる理由

**「Mastkälber(肥育された子牛)」**という点が重要です。

  • 一般的な「Boxcalfleder(ボックスカーフレダー)」は、自然に育った子牛の革を指すことが多いです。
  • 「Mastkälber(肥育子牛)」は、人為的に成長を早められた子牛で、通常よりも早く大きくなるように育てられます。
  • そのため、Mastkälber の革は通常のカーフレザーよりも少し厚めで、強度がある傾向があります。
  • つまり、Mastboxleder は Boxcalfleder の一種ではあるが、より耐久性が求められる用途向けに分類されていると考えられます。

2. なぜ名称を分けるのか?

言葉の使い分けには、革の「質感」と「用途」の違いが関係していると思われます。

名称 原料 特徴 用途
Boxcalfleder 自然に育った子牛(Calf) 非常に柔らかく、キメが細かい 高級靴、財布、バッグ
Mastboxleder 肥育子牛(Mastkalb) やや厚みがあり、耐久性が高い 靴、ベルト、カバン(耐久性が求められるもの)

違いのポイント

  1. 「Boxcalfleder」は最高級のカーフレザーを指す

    • 自然に育った子牛の革は、繊維が非常に細かく、柔らかい。
    • ただし、薄めで傷がつきやすい。
    • 高級靴や財布、バッグ向け。
  2. 「Mastboxleder」は、Boxcalfleder よりもやや耐久性を重視したもの

    • 肥育された子牛(Mastkalb)の革を使用しており、通常のカーフレザーよりも厚みがある。
    • そのため、靴やベルト、耐久性のあるカバンにも適している。

3. まとめ

Mastboxleder は、Boxcalfleder の一種ではあるが、肥育された子牛(Mastkalb)の革を使っているため、より耐久性がある種類として区別されている。
つまり、「カーフレザー」ではあるものの、より強度を重視する用途に適しているため、名称が分かれているというわけですね!


調べれば調べるほどややこしい…。

まあ、ボックスの意味も諸説あるようですが、シンプルにmastboxは英語(もしくは日本語)ではカーフもしくはキップ(生後6ヶ月~1年以内の牛の革)とかにするべきだったのでは?
と思います。

さて、その後の80年代の牛革アッパー事情ですが、
カンガルーやアディカーフモデルの価格に近いオックスハイド革のスパイクの例として、

ミュンヘン


ヨーロッパカップ80
いずれもシュリンク加工した革が使われていました。
こちらはシュリンクではないですが、オックスハイドだったらしいです。

まあ、価格のわりに革フェチにはそれほど魅力的ではないというのが正直な感想です。

80年代の牛革製スパイクの場合、アディダスはオックスハイドがやはり主流でした。
プーマもカウ(雌)が徐々に減り、ステア(雄)になりましたが、頑なに(?)オックスハイドではなくステアハイドの表示がほとんどだったと思います。

90年代になると、革の加工技術が進んだためか、昔は固かったイメージのあったステア革でも、WM-スターなどの革は今もとても滑らかで、カーフモデルと言われてもわからない気がします。

ちなみに最近のプーマではなぜかこちらのモデルがカーフでした。オリジナルは80年代の初めに登場したプーマランというナゾの皮革が使われていました。

また、90年代の国産デサントアディダスのスパイクは、デザインが80年代の名品に似たモデルが多く、割とお値打ちな価格帯のモデルもフルグレインレザーなどは革フェチも満足なしなやかさです。

88年に復刻されたウェンブレーSLにはボックスカーフが、ブレストと同じころの高価格モデルのエルスト(ご参考)はアディカーフが使用されたようで、90年代でも日本のアディダス製品は貴重な牛革のモデルを生産していました。

あと、KAMOさんオリジナルスパイクもカーフ製がありました。

今から考えるとJリーグ人気もあり、90年代半ばぐらいまでの日本には、世界的にも珍しいサッカースパイク希少種がたくさん存在していたと感じます。

今のサッカースパイクについてはまったく知識がありませんが、まだニューバランスなどはカーフ革のスパイクを作っているそうですね。
ただ、やはりカーフ革は黒が似合うと個人的には思います。

今回もスパイクのことよりも革の話になってしまいましたが、

西ドイツ時代のアディダスの牛革のスパイクは、

adicalf(西ドイツ製モデルに使用)
boxcalf(フランス(もしくは西ドイツ以外)製モデルに使用)
mastbox
rindbox

の革種があり、
rindboxはoxhideだが、
mastboxについては、プーマのみならずアディダスでも、他国語で表示された革種の名称は、正確に翻訳されていない場合があった(のかもしれない)。

ということで締めたいと思います。


ミュラー選手に贈られたゴールデンブーツはボックスカーフ製の当時のPenarolだったようです。

(2025年2月27日)